弓道×Kinect

VisLab OSAKA 大阪電気通信大学 総合情報学部 情報学科 澤井 勇士，前田 祐人，小枝 正直

弓道とは，和弓という長弓で矢を射て的に中（あ）てる日本の武道である．全日本弓道連盟のデータによれば，日本の弓道競技人口は13万人弱で，人気のあるスポーツと言えるだろう．弓道では，正しい姿勢を常に保つことが重視され，伸筋を使って絶えず筋肉を伸張させる必要がある．正しい引き方をすれば筋肉・神経の凝りが取れ，放した時の軽い衝撃が全身に快く伝わって血液の循環を良くし，爽快感はストレス解消にも効果があると言われている。
安定した的中率と弓道本来の運動の効果を引き出すには，正しい射形（弓の引く時の体の型）がとても重要である．正しい射形の一つの基準として三重十文字がある．これは，左右の足を結ぶ線，腰の左右を結ぶ線，左右の肩を結ぶ線がすべて平行で，それらの線が鉛直方向に重なる状態と定義されている．この三重十文字を個人で感覚的に習得するのは難しく，定量的な計測・解析が必要である。
従来の運動解析システムは，大掛かりで高価な機材が必要で，限られた場所でしか使用できない．またそれを使用するには，専門的知識を持ったオペレータが必要で，トップレベルの選手やプロ実業団等の限られた選手しか使えないという問題があった。
高校や大学の部活でも利用できるような，いつでも，どこでも，誰でも使える運動解析システムが求められていた．そこで我々は，安価で頑丈な光学式センサKinectを用いて，射形を計測して三重十文字をアドバイスするシステムを開発した。
このシステムを2015年3月26日から約４ヶ月間，ザ・ラボのアクティブラボで動体展示し，多くの方に体験して頂いた．

システム全体像
利用者はKinectの前方1.5m程度の位置に立ち，大型液晶モニタに顔を向けて矢を射る姿勢を取る．すると，本システムは利用者の肩，腰，足首関節の3次元位置を取得，それぞれの位置関係や平行度合いを求めて，三重十文字へのアドバイスを提示する。

三重十文字のアドバイスの様子
三重十文字ができていれば，肩，腰，足の部分に表示された丸印が緑色になり，画面下部に「GOOD」と表示される。三重十文字ができていない場合には，丸印が赤色になり，どの部位をどちら向きに修正すれば良いのかが画面内に表示される。

的の様子
矢の発射速度と方向，的までの距離，重力加速度などの値から，物理法則に基づいた計算をすることで矢が的に中たる位置を算出している．矢の的中位置には，赤丸を表示して利用者に分かりやすく提示される。

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