• 2024.10.01
  • 旅のノート―山に囲まれた国々と、そこに暮らす人々
山岳地帯への旅は、単なる旅行以上の意味があります。道を曲がるたび、山や谷に足を踏み入れるたびに、古代から続く物語や秘密を持つ全く異なる世界へと飛び込むことになるのですから。空に向かってそびえ立つ峰を擁する地域に暮らす人たちの生活は、周囲の山々と密接に関連しています。天然の巨人のようにそびえる山間を歩んでいると、山の壮大さに比べて人間がいかに小さな存在かということを思い知らされます。ですが、頂上を制することができたなら精神的に大きく成長を遂げることができるでしょう。今回のブログでは、私がこれまでに訪れた雄大な山を持つ国と、そこに暮らす人々をご紹介したいと思います。

ネパール:「世界の屋根」の上にある国
最初の国は、ネパール。この国の山々は天にも届くほど高く、人々は自らの魂と向き合い、内省する傾向があります。風景を支配するのは、世界最高峰エベレストを擁するヒマラヤ山脈。朝が来るたびに、頂に雪を乗せた山々に真っ先に朝日が注ぐ姿を目にすることができます。ネパールの人たちの暮らしはこの山々と密接に結びついており、知恵を使いながらも謙虚な態度で接しています。山々は時に寛容であり、また時には過酷でもあることを十分に認識した上で、この巨大な山々と調和して生活しているのです。カトマンドゥの賑やかな通りでも、静かな山村でも、あらゆる場所で崇高な霊性を感じます。エベレストの麓にあるこの地には、ネパールの魂だけでなく世界の魂も眠っているのでしょう。

スイス:アルプス交響曲
次は、スイスへと向かいましょう。この国の山の稜線はまるで巨匠の手によって彫刻されたかのように美しく、緑の草原と深い湖が平和と調和に満ちた景色を作り出しています。言うまでもありませんがスイス人はアルプス山脈を非常に誇らしく思っており、アルプスはまさにスイスの中心的存在であると同時に、国の象徴や魂でもあります。穏やかな外観からは想像できませんが、山間の村に暮らす人々は内なる強さと自制心を持っており、それが生き方にも表れています。彼らの伝統はその勤勉さと忍耐力によって守られ、世代を超えて受け継がれています。アルプスの山々は安全で危険度も低く、どのトレイルを歩いても新しい発見に出会い、素晴らしい眺めを楽しむことができます。

ペルー:アンデスの秘密
壮大なアンデス山脈を擁するペルーで、私は古代文明と神秘的な信仰という新しい世界に出会いました。山の尾根にあるマチュピチュへと登ると、まるで残されている遺跡が何世紀にも渡る物語を語っているかのようで、歴史の息づかいを感じます。アンデスの人々は、祖先の伝統を大切に継承しつつ、自然と完璧に共生しています。何世紀も昔と同じように、人々は急峻な斜面に広がる段々畑で農作業を行っています。歌や踊りは山々との深いつながりを感じさせ、生活のリズムは自然のサイクルと同期しています。アンデス山脈を見ていると、この山は単に風景の一部ではなく、この地で暮らす人々の文化と歴史の基盤となっていることがわかります。

コーカサス:永遠なる要塞
次は、ある種の厳しさと公正さを兼ね備えたコーカサス山脈。石には戦いと勇者たちの記憶が宿り、どの川にも伝説と物語が息づいています。コーカサス地方に暮らす人々は誇りが高く独立心が強く、その生活は自然や家族の伝統と深く関係しています。自らのルーツに敬意を払い、独自の習慣や祝祭を守りつつ、この瞬間を大切に生きる術を理解しています。ダゲスタン共和国の山中でもジョージアの急勾配の傾斜地でも、村には土地や先祖とのつながりを感じさせる特別な雰囲気が漂っています。コーカサス山脈は人々を守る要塞であると同時に、挑みかかってくる存在でもあります。そして、立ち直る力と恐れない心を養ってくれる師でもあるのです。

キルギス:空と遊牧民の地
中央アジアの中心部に位置するキルギスでは、天山山脈が地平線まで続いています。この国の青々とした牧草地と雪を頂く峰の間では、何世紀もの間、遊牧民が太古から続く伝統を守りながら暮らしています。山の麓に点在する移動式住居・ゲルは、まるで物理的にも精神的にも「永遠なる旅」を象徴しているかのように見えます。キルギス人は自由な精神を持ち、自然のリズムに合わせて、その導きに従いながら自然と共存して暮らしています。キルギスでは、山は単なる背景ではなく人生の一部であり、独立心と強さ、自由への憧れ、そして大地との融合を映し出す存在なのです。

ブータン:幸せの国
ヒマラヤ山脈に囲まれたブータンでは、山は聖なる場所。人々は自然のリズムに合わせて暮らしを営んでいます。「幸福」を国の政策の指標にしているブータン国民は、伝統と自然に深い敬意を払い、周囲の世界と調和しながら生活しています。ここの山々は外の世界から国を守る壁の役割を果たしているだけでなく、精神的な強さやインスピレーションの源にもなっています。どの寺院でもどのトレイルでも、「壮大で永遠なるもの」や「幸せと悟りを求めるブータン人を育み、ひらめきを与える何か」の存在を感じずにはいられません。

アフガニスタン:忘れられた山々
険しく壮大な山を擁するアフガニスタン。この国の民は、常に自然の厳しさや運命と闘いながら生活しています。アフガニスタンの山々は多くの戦いと人々の苦しみを目にしてきました。そして、住民たちの強さや回復力を守ってきたのもこれらの山々です。厳しい状況を何度も経験してきたアフガニスタンの山岳民族たちは、平和と平穏のありがたさをよく理解しています。彼らの目は、何百年にも渡り自分たちの土地と文化を守ってきた民族の歴史を物語っています。アフガニスタンの山岳民族は、祖先が何よりも重んじた伝統や慣習の世界に暮らしています。彼らの朝は、礼拝と新たな一日への感謝で始まります。

南極大陸:氷の山脈と終わらない冬
最後にご紹介するのは、岩ではなく巨大な氷でできた山が横たわる地、南極大陸です。この世界最果ての地は、過酷ながらも魅惑的な美しい景色で訪れる人を迎えます。溶けることのない氷と一年中続く寒さの中に佇むこの地の山々は、永遠性と不変さを象徴しています。南極大陸は、我々が世界について知っていることはほんの少しだけで、この世にはまだ出会っていないものや知らないことがたくさんあることを気づかせてくれます。永住する者のいないこの地では、太古の時代や自然の未知なる力がすべての石や氷河にひっそりと刻みこまれているのです。

山に囲まれた国々を巡る私の旅は終わってしましたが、思い出はいつまでも私の心に残ることでしょう。山があらゆる生き物に君臨する国々は、自然を敬う心と簡素な暮らしへの感謝を教えてくれます。山で暮らす人々は数々の困難や課題に直面しながらも忠実に伝統を守り、雄大なる峰に強さとインスピレーションを見いだしています。これらの山々がある限り、そこで暮らす人たちはこの過酷で美しい地に足を踏み入れる旅人に彼ら特有の文化やいにしえの知識を語り聞かせてくれることでしょう。

特派員

  • ダニアール・バクチエフ
  • 職業公務員

はじめまして。ダニアールと申します。公務員です。キルギス共和国に住んでいます。趣味は本を読むことです。また、旅行やいろいろな食べ物を味わうことも好きです。よろしくお願いします。

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