• 2026.07.22
  • イタリア旅行での「最大の勘違い」
イタリア旅行から帰ってきた人の話を聞くと、「料理は最高だったけれど、レストランのサービスが遅かった」「電車が時間通り来なかった」という感想をよく耳にしませんか。
実はこれらの不満の多くは、イタリアの文化を知らずに自国の感覚をそのまま持ち込んでしまうことから生まれているかもしれないのです。
最近、海外メディアでも「旅行者がイタリアで犯しがちなミス」が話題になっていました。その中でも特に多いのが、「短期間でイタリア全土を制覇しようとすること」です。
例えば、初めてのイタリア旅行で、ローマ、フィレンツェ、ヴェネツィア、ミラノ、ナポリを1週間で回ろうとする人がいる、と聞いて仰天した覚えがあります。地図で見ると近そうに見えますが、実際には移動時間も体力もかなり消耗します。加えてイタリアは、電車の遅延が非常に多いですし、故障や何らかの理由でキャンセルがあったりする上に、郊外のバスにはキャンセルの通知すら存在しないので、余裕を持った旅程を立てる必要があるのです。
もう一つ、旅行者がする勘違いは「チャオ!」の使い方。日本では「チャオ」はイタリア語の代表的な挨拶として知られていますが、実際にはそして本来、は友人や家族など親しい間柄で使う言葉です。もちろん失礼とまでは思われませんが、初対面の店員やホテルのスタッフに対しては、「Buongiorno(ボンジョルノ)」や「Buonasera(ボナセーラ)」の方が自然です。イタリア人は挨拶をとても大切にします。お店に入るとき、または、自分の順番が来て店員さんと目があった時に、まず挨拶をするだけで相手の対応がぐっと柔らかくなるので、挨拶はマメに。
そして、多くの旅行者が戸惑うのがレストランです。「注文を取りに来ない」「食後に会計を持ってきてくれない」「サービスが遅い」云々、、、、
こうした不満はよく聞きますが、実はイタリアではそれが普通です。イタリア人にとって食事は単なる栄養補給ではありません。家族や友人と時間を共有するための大切な儀式のようなものです。ウェイターとの会話も弾ませて、その会話も料理の一部として楽しむのです。
食事といえば、多くの外国人観光客は「本場のピザとカルボナーラを食べたい」と思っています。それ自体は悪いことではありません。けれど、その人気が行き過ぎた結果、カルボナーラが本来の名物ではない地域や店でも、観光客向けに提供せざるを得ない店が多いと聞いています。
実際には、イタリア料理の魅力は地域ごとの多様性にあります。ミラノならリゾット、ヴェネツィアなら魚介料理、ボローニャならタリアテッレ、ナポリならピザというように、それぞれの土地に独自の伝統があります。
ところが観光客はどこへ行っても同じ料理を注文するため、その地域ならではの味を見逃してしまうのです。
予定を詰め込みすぎず、急がず、土地ごとの文化や食事を楽しむ。その姿勢こそが、イタリアをより深く楽しむための最大の秘訣ではないでしょうか。

特派員

  • 三上 由里子
  • 職業音楽家

チェリスト。ミラノを本拠地にソロとアンサンブルの演奏活動中。クラシックからポップスまで幅広いジャンルのレパートリーを持ち、イタリアの人気コメディアンの番組にバンド出演中。

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