しかも、今だに雨も数日続けて降ったりしている。
以前にも説明したが、ポルトガルの天候を大きく左右しているのが、「アソーレス高気圧(Azores High)」である。これはアソーレス辺りに存在する大規模な高気圧帯で、通常であればポルトガルの気候を比較的穏やかで安定したものにしている。この高気圧が北側に張り出すと、ポルトガルは乾燥しやすく、安定した天候になる。
しかし近頃は、この高気圧が弱まったり南へ移動して、大西洋の低気圧がポルトガルへ直接張り込みやすくなっている。その結果、嵐などが頻発するようになっている。
流石に冬の嵐のような天気は減ったが、強風は依然として多く、今年はサハラ砂漠から運ばれてくる砂塵が特にひどいように思える。
ポルトガルに飛んでくるサハラ砂塵は、先ほど述べた大西洋の低気圧システムによって、北アフリカから強い風を運ばれることで発生している。
この現象は春に良く起こり、空は奇妙なオレンジ色に染まり、視界も大きく悪化する。どこか、アメリカ・フロリダ半島を舞台にした映画の、オレンジ色に霞んだシーンのようで、少し妄想的でもある。もちろん健康には害を及ぼすものである。また、外に停めてある車には赤黄色の汚れが残り、フロントガラスのワイパーはガリガリと嫌な音を立てる。

車の窓ガラス 砂塵が空気中にある状態で雨が降ると、更に汚くなる
このサハラ砂漠の砂塵を完全に止めることは、現在のところ不可能だが、私は最近まで、サハラ砂漠で「Great Green Wall Accelerator」という大規模な国際的取り組みが進んでいることを知らなかった。
(https://www.unccd.int/our-work/ggwi/great-green-wall-accelerator)
そもそも「Great Green Wall」とは、アフリカ連合の超巨大プロジェクトであり、サハラ砂漠の拡大、干ばつ、食料不足、貧困などに対抗するために始まったものだ。
当初は、セネガルからジブチまで、アフリカ大陸を横断する形で、長さ8,000km、幅15kmにも及ぶ「木の壁を」作る構想だったらしい。しかし現在では、単なる「木の壁」ではなく、森林再生、生態系回復、水管理などを含む、総合的な土地再生プロジェクトへ進化している。
ただし、この計画はあまりにも広大で、国ごとにバラバラだったり、テロ問題があったり、さらには資金の多くが現場に届かないなど、多くの問題を抱えている。
そこで2021年、パリの「One Planet Summit」で、フランスのマクロン大統領らが中心となり、元々のプロジェクト名に「Accelerator(加速)」を加えた、「Great Green Wall Accelerator」が立ち上げられた。計画を実際に前進させるための調整機構である。
一見すると、ポルトガルのサハラ砂塵とは関係ない話にも思える。だが、この取り組みには、長期的には、サハラから飛んでくる砂や極端気象を少しでも緩和できるかもしれない、という期待も含まれているそうだ。
私の住む地域では、この時期になると原っぱに大量の蛍が現れる。蛍光緑色の小さな光がそこら中を舞い、まるでクリスマスイルミネーションのようになる。
だが今年は、去年ほどは見かけてない。
蛍は、寒さと雨には弱いのだろうか。
かつてのポルトガルのイメージであった「穏やかな帰国」を待ち望んでいるのは、私たちだけではないのかもしれない。

ポルトガルの蛍
